会長職の引き継ぎ

 引き継ぎ。
 現会長との引き継ぎを居酒屋で行った。現会長は、微に入り細に穿ったとてもわかりやすく詳細なマニュアルを用意してくれた。連合PTA(区立中学PTAの連合体。以下“連P”と省略する)と地区のPTA(区の中で近隣中学PTAの集まり。以下“地区P”と省略)と単独のPTA(自分の学校のPTA。以下“単P”と省略)の仕事がそれぞれある。
 まず驚いたのは、PTAの仕事はいわゆる“単P”の仕事がほとんどだと思っていた。けれども違うのだ。単Pも連Pも地区Pもそれぞれにそれなりにある。仕事がある。というよりも会合がある。と云った方がいい。恩師が云っていたのは、このことなんだ。と現会長の話を聞いていてようやく納得した。PTA会長は会合が多い。いわゆる“寄り合い”だ。寄り合いには酒が伴うのは、日本において半ば常識となっている。恩師の云っていたことを、心のなかで反芻していると、人の心の中を覗いたように、現会長曰く、「PTA会長は呑めた方がいいです。むしろ呑めないと勤まらないかもしれない。」とにこりと笑った。それはつまり、“会長をやれば、たくさんお酒が呑めますよ。いいでしょ。お酒の好きな人には堪らないよね。”と云っているように聞こえた。
 会長にはPTA以外にもうひとつ大きな仕事がある、「青少年対策地区委員会」ってご存知でしょうか? 設置の根拠はよくわからないが、地域の青少年の健全な育成を目的として、区役所が主導して出張所ごとに設置している。PTA会長はその「青少年対策地区委員会」(以下“青少対”と省略)の中核メンバーになるんだそうだ。メンバーは出張所の職員、自治会の役員、小中学校長、小中PTA会長など。地方に行くとよくある、「子ども会」に似た組織のような気がする。しかしこの「青少対」。話を聞けば聞くほど、主役は子供ではなく、なんとなく大人のような気がするのだ。大人が企画した諸行事に子供が参加する、という印象なのだ。そういう組織に入る。内部から観察しよう。
 呑みながら、話を聞いていたので、だんだんわけがわからなくなってきた。記憶が怪しくなってきたので、混濁しているところは省略する。