2010-01-01から1年間の記事一覧

『羅生門』『藪の中』(芥川龍之介)

第12回 黒澤明生誕100年記念(どんどん行こう編)−映画の原作にあたる(その5)− 芥川龍之介の作品は、なかなか映画になっていない。鷗外・漱石の作品は映画化されているが、この芥川の作品は映画化=脚本化されていない。ということに当時まだまだ駆け出し…

『どん底』(ゴーリキー)

第11回 黒澤明生誕100年記念(どこまでも続くよ編) −映画の原作にあたる(その4)− 今月は、先月に引き続きロシア文学が原作となっている映画についてみてみよう。黒澤は自分というものを形成する上でロシア文学はとても大きな糧だった、と云っている。ド…

『白痴』(ドストエフスキー)

第10回 黒澤明生誕100年記念(さあこれからだ編)−映画の原作にあたる(その3)− さて、いよいよ重量級の原作を紹介する時がきた。 なんとなんと、ドストエフスキーの『白痴』を取り扱おうと思う。 ロシア文学の古典を小欄で扱うなどとは、まったく無謀に…

『日日平安』『赤ひげ診療譚』『季節のない街』(山本周五郎作品)

第9回 黒澤明生誕100年記念(まだまだ編)−映画の原作にあたる(その2)− さて、今月は、山本周五郎の作品が原作となっているものを三点挙げて、考察してみよう。 『日日平安』(昭和29年(1954)) 新潮文庫(改版)(平成16年(2004)) 『赤ひげ診療譚』…

『血の収穫』(ダシール・ハメット)&『キングの身代金』(エド・マクベイン)

第8回 黒澤明生誕100年記念(もひとつ編)−映画の原作にあたる− 今回は、いよいよ黒澤映画の原作を映画と比較しつつ、読み込んでみたい。まだまだこの黒澤明のテーマでお付き合いをお願いする。 黒澤映画は、むろん『生きる』や『七人の侍』のようなオリ…

『大系 黒澤明』1巻〜4巻

第7回 黒澤明生誕100年記念(引続き編)−黒澤監督自身のことば− 前回、前々回に引き続き、黒澤関連本を紹介する。このテーマでもう少しお付き合いをお願いしたい。今月は、黒澤明監督本人の言葉を追ってみた。 黒澤明本人の自伝としては、『蝦蟇の油−自…

『黒澤明という時代』(小林信彦) ほか

第6回 黒澤明生誕100年記念(後編)−黒澤明と黒澤映画− 前回に引き続き、黒澤関連本を紹介する。先月は黒澤と一緒に仕事をした人の書籍を載せたが、今月は黒澤の映画を観た人の著作物を選んだ。 俎上に載せた本のすべてに共通することがある。 “黒澤は人…

『複眼の映像−私と黒澤明−』(橋本忍) ほか

第5回 黒澤明生誕100年記念(前編)−黒澤組の中で 今年は、日本が世界に誇る偉大な映画監督である、黒澤明氏の生誕100年の年であり、黒澤監督作品の記念上演や黒澤監督関連本の出版が相次いでいる。 今月と来月の二回に分けて、黒澤明に関する書籍を…

『円朝ざんまい −よみがえる江戸・明治のことば−』(森まゆみ)

第4回 三遊亭圓朝という人 明治時代の落語家、三遊亭圓朝という人は近代咄家の祖、とも云える人。また落語の長い歴史の中で中興の祖とも云える人。いまや落語の神様のように思われている人である。三遊派一門の最高の名跡は「三遊亭圓生」であり、この名跡…

『芸づくし忠臣蔵』(関容子)

第3回 忠臣蔵を観る 日本人の生活や行動様式、あるいは考え方など諸々の事柄に深く根付いている「忠臣蔵」。この物語が最も早く完成された形で登場したのが、人形浄瑠璃の「仮名手本忠臣蔵」。寛延元年(1748)に大阪の竹本座にて初演された。実際の事件か…

『リチャード三世は悪人か』(小谷野敦) ほか

第2回 リチャード三世に魅せられる シェイクスピアの戯曲の中で「リチャード三世」は、最も上演回数の多い演目だと云われている。宮廷内の権謀、裏切りや寝返り、嫉妬や虚言、さらに殺人などの不誠実な行為の一方で慈愛や勇気、正義などの徳目がたくさん表…

『謎ときシェイクスピア』(河合祥一郎)

第1回 謎ときシェイクスピア 本が好きだと云って40年。芝居が好きだと云って30年。 芝居を観ることと本を読むことは、大好きですが、“三昧”とか“中毒”とか、そこまでには至っていません。なぜならば、たとえば映画や話芸(落語、講談など)、それから登…