2016-01-01から1年間の記事一覧

 『シェイクスピア −人生劇場の達人−』

現在、新国立劇場では12月22日まで、シェイクスピアの『ヘンリー四世』が上演されている。 『ヘンリー四世』は1部と2部に分かれていて、長尺だからなかなか上演機会がない。また登場人物が多岐にわたっているので、役者を揃えなければならないし、主役…

 『シェイクスピア −人生劇場の達人−』

河合祥一郎はシェイクスピアを研究している大学の先生だ。彼はわかりやすい言葉で次々とシェイクスピアの入門書を書き発行しているが、今回俎上に乗せる本は、まったくシェイクスピアを知らない人向け、というものではなく、少なくともシェイクスピアの四大…

 『男ありて 志村喬の世界』

澤地久枝が名優、志村喬を描いている本を見つけた。新刊はもうないと思う。古本屋で見つけた。しかも著者サイン本。 志村喬。1905年(明治38年)生まれ。1982年(昭和57年)逝去。戦前から活躍する昭和を代表する名優である。 志村喬の役者人生…

 『黒澤明と三船敏郎』

久しぶりに黒澤明と三船敏郎の関連本を手に取る。ふたりの巨人の人生が一冊の本にまとめられた。ある意味とても贅沢な本である。著者は外国人。2001年に原典が上梓され、昨年その日本語訳が出版された。この日本語訳は索引を含めると700ページを越え…

 『震災編集者―東北の小さな出版社〈荒蝦夷〉の5年間』

5年前の東日本大震災の後、被災者の様子を記録した書籍は夥しい数の点数が発刊されている。震災直後、数カ月後、1年後、・・・そして5年後。あらゆる時期を舞台にしてさまざまな被災者を観察した書籍の一群が存在している。そしてたいがいの場合、それら…

 『「憲法改正」の真実』

本稿が読者諸氏諸兄のもとに届く頃には参議院選挙の結果がはっきりしており、今後の政治日程がある程度みえてきているのだろう。果たして憲法改正の動議を出せる勢力は誕生したのだろうか? 現在の政権がどうしてあれほど高支持率を維持していられるのか?・…

 『やがて海へと届く』

東日本大震災から5年が過ぎている。死者を弔う方法がわからない。 無残にも残酷にも途中ですっぱりと断ち切られた人生。運命とはいえ、これほど悔しくて悲しいことはあるまい。彼らの魂はどこにいくのだろうか。死んでしまった者の無念。生き残った者の後悔…

 『献灯使』

東日本大震災から5年が過ぎた。震災直後からさまざまな形で表現者たちはこの震災をテーマに作品を発表している。当初の作品は表現の差こそあれ、死者の鎮魂とこれからの望みを描いているように思う。そして5年が経ったいま、何も変わらないことへの絶望、…

 『精霊の守り人』

20世紀では映像にとてもできない。無理だろう、と云われていた作品が続々と映画化、テレビ化されている。「指輪物語」しかり「ナルニア」しかり。 そして今、日本のファンタジー小説の最高傑作と云ってもいい、上橋菜穂子さんの「守り人」シリーズがついに…

 『書く女』

現在流通している5,000円札に描かれている人物は、樋口一葉である。本名、樋口夏子。戸籍名は、樋口奈津。人呼んで“なっちゃん”。またの名を「ひぐちなつこ」を縮めて“ひなっちゃん”。明治時代の女流小説家。そして夭折した天才。貧困の中で今も読み継…

 『わたしを離さないで』

「臓器提供」を考えるとき、人間の持つ臓器の中で肺と腎臓はふたつあるから、生きている人からどちらか一方の提供は可能であり、以前から行われていた。そしてもっと身近なところでは骨髄の提供は幅広く行われている。しかし、それ以外の臓器は脳死の判定を…

 『映画で日本を考える』

映画からその当時の世の中の雰囲気やその時代の考え方を探る、ということは映画ファンならば、大なり小なり自分でやっていることだろうと思う。とはいうものの、たった一本の映画から、その映画が製作されたときの時代を検証することはなかなか難しいし、危…