「聯合艦隊司令長官 山本五十六」 

映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六
 海軍きっての開明派が聯合艦隊司令長官として米国と戦わなければならなかった、その運命の巡り合わせ。戦局を有利に進め、勝っているうちに講和に持ち込もうとする意図があったが、どの時点でそれが間違えてしまったか。人事が大切。聯合艦隊司令長官には、自分の部下となる、艦隊司令長官や各艦の艦長を決める人事権はなかった。案外このあたりが日本の敗戦に関わっているのだろう、と映画を観ながら思った。
 太平洋戦争前の世論とか世の中の雰囲気は、この現在とよく似ている。当時2年間でなんと9人も首相が変わった。その決まらない政治に対する閉塞感を打ち破るために、日独伊三国同盟を締結して米国と戦争するのだ! 神州日本不敗神話。
 自分の目と耳と心で世の中をしっかりみる。ちゃんと認識すること。そういう態度が大切なんだ。これが本作のテーマであり、山本五十六に云わせているセリフだ。現状のその場の雰囲気に流されることなく、冷静にみて、それを自分で考える。時代の勢いに呑まれてはいけない。
 本作は、食べるシーンが多い。艦内の士官食堂。山本家の食卓。町の汁粉屋。書斎でのおやつ。山本五十六役所広司がどれも上手に食べている。艦内での長岡名物(山本五十六の故郷)の水まんじゅうをもりもり食べるシーンとミッドウェー海戦でこてんぱんにやられた敗将、南雲中将と茶漬けを食べるシーンは泣いてしまうのだ。