「ある女」(ハイバイ)

 ハイバイ本公演 「ある女」 於 こまばアゴラ劇場 19:00〜
 タカコはいま存在しているOL、あるいは日本女性の典型である。ひたすら癒されることを求める。タカコの場合は、それが男だった、ということにすぎない。そして男女の仲でも一所懸命に“空気を読んでいる”。森に妻がいることがわかった時に、なぜ感情が激さないのか? なぜ二者択一を迫り、別れる決心をしなかったのか? その場の微妙な空気を読んで、そしてふわふわと漂うように生きている。自分の明確な意思とは関係なく状況に流されている。歯がゆい。じれったい。しかしそれが今=現代なんだ。怖いこと。恐ろしいこと。困難なこと。厳しいこと。そういうネガティブなことを先延ばしにする、その行動はまったく“今”なのだ。どこかの国の状況も同じようなもの。避けて通れないことを今せずに、後に延ばしているが、いよいよの時、どうするんだろう。しもネタはほどほどに。やっぱ、男女の生殖器そのものを言葉にしてしまうと、芝居の品格が下がってしまうのは否めないと思うが如何だろうか?
 映像でのナレーションが素晴らしい。テンポよくリズミカルに話が進んでいく。待てよ、ひょっとするとこの調子で芝居の部分もこのナレーションで行っちゃった方がいいかも。などと芝居を否定するようなことまで思ってしまった。それほど、ナレーションが素晴らしかった。