「キツツキと雨」

 映画「キツツキと雨」。沖田修一監督。役所広司小栗旬
 岐阜県美濃地方が舞台であり、役所広司が扮するきこりと小栗旬扮する若手映画監督との交流を描いている。人見知りする若者と中年の親父。職業を剥ぎ取れば、どこにでもいる男たち。が、この映画のおもしろさは、映画監督ときこりという職業設定にあるのだ。
 木を切っている場所がたまたま映画のロケ地になってしまい、映画の撮影というまったく知らない経験をして、映画製作に目覚めてしまうきこりのおっさん。自分のやりたいことをやっているのだが、自分に自信がないまだまだ坊やの映画監督。
 きこりのおっさんはふわふわした坊やの監督に自分の息子を投影する。法事の席で親戚から、いつまでもふらふらしてないでなにかしろ、と口々に意見をされる息子。父は親戚に「それでも本人の気持ちがあるだろ」と一喝し、親戚を黙らせる。むろん息子は父を見直す。木こりの父は若い監督との交流によってすこし若者の気持ちがわかりかけていた。この部分がこの映画のひとつの山場であろう。
 役所きこりが小栗監督に何かをしてあげようとしたり、何かの質問をするとき、小栗監督は、「大丈夫です」と答える。これは若者の返事の仕方で“必要ありません。”あるいはもっと直訳すると“私はそれをしてもらわなくても平気です”という意味なのだ。この台詞に代表されるように彼もふつうにその辺にいる25歳の若者なのだ。

キツツキと雨 豪華版 [DVD]

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